Ⅴ.

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『そんなに見るなよ。テレるから』 先生は微かに頬を染めていて、でもあたしから目を逸らすことはなかった。 『そんなに見ないでください。恥ずかしい…から』 お互いに同じことを言って、クスリと笑い合う。 先生のこの穏やかな笑みが好きだな……と、改めて思っていると。 『また来いよ』 『えっ……』 先生の長い指が頬に触れた。 『今までと同じでデートはしてやれないけど、モモさえよければまた来て欲しい』 突然の先生の言葉に声が出なくて、コクンと頷くのが精一杯だった。 そんなあたしを嬉しそうに微笑み、頬に触れていた指がそっと唇をなぞる。 『チョコ、ついてる』 指についたチョコを舐める先生から目が離せなくて、胸のドキドキが止まらなかった。 『じゃあ、また日曜日に遊びに来ても…いい?』 『ん、いいよ』 約束、と先生の目の前に差し出した小指に先生の小指が絡まるのを見つめてると嬉しさがこみ上げてくる。 絡めた指が熱を持ち、愛しさと恥ずかしさと嬉しさが混ざった想いが身体中から溢れてしまいそうだった。
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