Ⅴ.

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絡んだ指が離れていくのを見て寂しさから先生を上目遣いに見つめると。 離れたはずの手がもう一度戻ってきて。 クイッと引かれた瞬間に、先生の腕の中に包まれる。 ドクンドクンと聞こえる鼓動はあたしのものだけじゃなくて、あたしと同じように少し速い先生の鼓動と胸の温かさにゆっくりと瞳をとじて。 身体中で先生のことを感じた。 『ねぇ…先生』 『…ん?』 『あたし、先生を好きになってよかった』 だって、今すごく幸せだから。 少しだけ顔を上げて、先生を真っ直ぐに見つめながらニコリと笑うと。 『やっぱりおまえ、可愛いな……』 あたしを抱きしめる腕にギュッと力が込められて、あたしの胸も一緒にギュッと締め付けられた。 ここに来るまで、もう終わりかもしれないと不安でいっぱいだったあたしの胸は。 今は先生の温もりと匂いと、先生からの優しいキスでトロけてしまいそうなほど温かい気持ちで溢れていた。
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