Ⅴ.

9/29
461人が本棚に入れています
本棚に追加
/193ページ
「……尚吾、どうしたの?」 「……トーコを、待ってた」 「えっ…」 ゆっくりと近づいてくる尚吾を前に、あたしの足は少しだけカタカタと震えていたような気がした。 その瞳がやけに真剣だったからかもしれない。 その表情が、真っ直ぐだったからかもしれない。 「少し、話せるか?」 フッと笑う尚吾は、少しぎこちない笑みを作って。 こっち、と視線だけであたしを誘導しながら背を向けた。 「あたしも、尚吾に話さなきゃいけないことがあるの……」 「ん……」 振り返る尚吾の背中を追いかけるように、あたしたちは学校をあとにした。
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!