Ⅰ.

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「めっちゃ、元気。ここ、日当たりがいいからじゃないかな」 キラキラ光る校庭を見て。 今日は天気いいから、なんて誤魔化す。 「確かにあったかいよね。あたしの席メチャクチャ寒いよ」 ブルブルっと震えるマネをして、いいなぁ…と、あたしの前の席に座って羨ましいと口を尖らせた。 「だね、この季節の廊下側は地獄だね」 「そうなんだよ。隙間風がすごくてさ」 「わかる、席替え前はホント寒かったもん」 ここの席の前は、廊下側の前から2番目だった。 寒かっただけじゃなくて、 先生のことを意識しないようにするのも必死だった。 さっきの佐野さんたちの会話までバッチリと聞こえてしまうのも難点だったな。 ……なんて、千晴には言えないんだけれど。 先生のことが好きだってことも、ましてや今、付き合ってます。だなんて。 言えるわけがない。 言ってはいけない。 あたしたちが付き合ってること。 周りにバレてしまったら、そのときはきっと。 あたしたちの関係は呆気なく終わるから。
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