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「…親父。今日は、どこの村まで行くんだ?」
オレは、年期の入った荷馬車の上に寝転がりながら、馬を先導している茶髪の長身男に声をかけた。
「…お前なぁ~、若いんだから働けよ!」
呆れた声で言うと、振り向いてオレを見た。しかし、言ったところで意味がない事をよく知っているので、親父は大きくため息をつく。
…いつもしているやり取りだ!
「聞こえなーい!何か言ったか?」
耳を両手でふさぎわざとらしく言ってみる。
「…っ!!ルア!!」
「ムダだっての!!」
怒鳴ってきた親父にどや顔を見せて舌を出して挑発する。毎度、簡単に挑発に乗ってくれるので、オレの退屈は尽きない。
「…そこまで言うのなら…」
親父は、馬の手綱を手放すと腰に引っ提げている、錆び付いた鞘から剣を引き抜く!!
体の前に構えると、視線をオレに向ける!!
「…元国衛兵として働いた剣で、お前の根性を叩き直してやる!!」
「おっ、マジで!?やるやる♪」
待ってましたとばかりに、飛び起きると近くに置いていた木剣をひっつかむ!!
オレは、こういう事がしたかったんだ!
荷馬車から、ジャンプし親父の前に立つ。
「…っというか、前から思ってたんだが木剣と鉄剣(ソレ)ってズルくねーか!?」
「鉄製であっても、錆びてしまえば木剣と変わらん!!かかってこい!!ルアっ!!」
「なんなら、行くぜっ!!」
かけ声と共に駆け出す。
腰から剣を抜く姿勢のまま、親父の懐に突っ込む。
「はああァァァァ!!」
横に一閃しようとしたその時!!
…どこからか、剣戟の音がした。
「「っ!?」」
オレと親父は同時に動きを止めると、辺りを見渡す。周りにあるのは、平坦な草原と木々が生い茂る名も無い小さな森。
「こんな田舎で闘っているのか?」
「…この辺りに、獣が出るという話しも聞いたことないぞ?」
オレの質問に親父が答える。
だが、それなら先程の剣戟の音はなんだ?
音が聞こえたのは、森の方向だった。
だったら、そんなに距離は遠くないはず…
「ちょっと様子見てくる!!」
「まっ、待て!」
親父が止めに来る前に走り出すと、スピードを落とす事無く森の中へと入っていく…
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