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退屈凌ぎに起き上がって窓のそばに向かった。
ちょうど時期だからか、窓からは綺麗な夜桜が見える。
看護師さんの話によると、夏のカラッとした日にはここから海も見えるらしい。
夏が少しだけ楽しみだ。
その頃にはこの怪我が治ってるといいんだけどね。
コンコン
私が窓から見える夜桜を堪能していた時、不意に私の病室にノックの音が響いた。
看護師さんかと思ったが、入ってこないところを見るとどうもそうじゃないらしい。
私は入口まで行って扉を開けた。
既に消灯時間で廊下は真っ暗だった。
顔はぼんやりと見えた、どうやら私と同い年くらいの女性のようだ。
「何か……御用ですか?」
ここは個室で私以外誰もいない。
私の知り合いでもない。
ということは部屋を間違えたのだろうか?
「お部屋、間違えたのですか?」
「いやー……ここであってますよ……」
胸に重くのしかかるような冷たい声。
「看護師のお姉さんが言ってたんだぁ……」
ここで私は大変な事に気付いてしまった。
「この部屋のものは好きに使っていいってね……」
いままで暗くて気がつかなった。
「だからぁ……」
その女性には、
「あなたの腕、ちょうだい?」
左腕がなかった。
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