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一名が倒れ伏し、それを救うためにもう一人が欠けた。この場では安易に殺すよりも、敵に重傷を負わせた方がより適当だった。
後ろの味方は全滅していたため、僕は後ろを気にしつつも中尉を補佐するために前を向いた。その必要は無かった。
「……ぁ」
後ろも前も全滅していた。周囲数十メートルに渡って敵しか見えない。今度の僕も死んだのだ。
せめて敵の大将くらい……と思うも、三合と打ち合う事なく僕は引き裂かれた。
「クレール、そろそろ支度しないと遅れるわよ!」
ばしん、と胸に衝撃が走り、僕は飛び起きた。
「……敵強すぎだろ」
「何の話? それより早く支度しなさいよね。ご飯ももうすぐ出来るんだからっ」
五十……何度目の死だっけ。確か……前回がご(、)めんな(、)死にすぎで、だから今回が五十八回目か。……うーん、何かいい語呂は無いだろうか。繰り返しすぎて何回目かも分からなくなってきた。取り敢えず語(、)呂考えるの嫌(、)になってきた、でいいや。
しかしあれだね。黒いの。あの千人隊長とかいう化け物、本当化け物。確実に人間止めてるね。五十七回も死んで経験値を蓄えている僕が一向に勝てる気がしないんだけど。なんだろう……気合いが足りないのかな? 割と精神論の重要性に気付き始めてきたしね。死兵ほど面倒な相手も居ないし。
多分あれは相手にしてはいけない分類の存在なんだろうね。一応人間の形をしているし、殺せば死ぬのだろうけど……まあ現状厳しいものがあるね。実は戦わない事が正解なのかも知れない。
「というわけでサラ。強そうな敵が来たら真っ先に逃げるね」
「……いきなり何よ。昨日は初陣で敵をばっさばっさ薙ぎ倒して勇者になる! とか言ってたじゃない」
それはもう遠い過去の事なのです、なんて言えず僕は黙った。
「挙げ句姫様と結ばれてどうたら言ってたじゃない」
「姫はサラだけどね!」
焼き餅焼いているのが可愛くて、ついそんな事を言った。脛を蹴られた。理不尽な。
◇
「クレールです、二等兵です、よろしくです」
ささっと挨拶を済ませ、僕は遊撃隊に入隊した。
今までは剣の腕というか、強そうな雰囲気を中尉に買われて第一分隊に居たわけだが、いかにも新人っぽく頼り無い過去の自分を演じていたら見事ここに来られた。
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