第1章

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 最初は私語を嫌う屈強な戦闘集団と思っていたが、ただ意思疎通の取れない弱卒である。前回は真っ先に逃亡していた、いわば僕を見捨てたくそったれなやつらだ。本当にただの寄せ集めというか、ごみの溜まり場みたいなものだ。遊撃部隊と言えば聞こえは良いが、ただの孤立した部隊と言えばそれで終わりだ。誰も僕たちに戦果を期待しちゃいない。  だが好都合だ。僕が逃げても誰も気にしない。生き残れる。今度こそ家に帰る事が出来る。 「くそ、報告はまだか!?」  僕は希望に満ち溢れているが、周りはピリピリとしていた。  今回僕がここに居るのも緊急の招集なのだ。本来はのんびりと領主様の家の警備をしていれば終わる仕事だったのが、何故か王国の兵士に襲われて死んだ。理由こそ分からないが、王国の兵が来る事自体は分かっていたようだ。  今も斥候が戻って来ないと騒ぎになっている。  前回は緊張とか興奮でそんな騒ぎを気にしなかったが、今なら少しは気持ちが落ち着いている。  もう少し、あとほんの少し。  太陽が分厚い雲に遮られ、雨が降るより早く敵はやって来る。  領主様の元へ参上してから二日目。この日、敵が来た事に間違いは無い。だから敵は来る。……いや、来てくれ。来て欲しい。早く帰りたい。 「敵襲ッ!!」  来た!  僕は急いで逃げようと足を動かし――――転けた。すてん、と。  頭の中が疑問符で埋め尽くされる。  わけの分からないまま見た自分の手は、驚くほど白くなっている。力を入れすぎていたのだ。  足はがくがくと震えている。身体が言う事を聞かない。僕の心は、未だあの時の死を乗り越えていなかったのだ。身体は生き返ったけど、心はまだ死んでいた。 「いやだ……そんな」  気が付いたら王国の兵士が目の前に居た。  否定の言葉が口から出た。自分は勇者では無かったのか? あの奇跡はなんだったのか?
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