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他の人間……例えば王都から来た騎士様に何があったかと問われても、僕は事実をそのまま話せばいい。軍は瓦解して、僕は這々の体で逃げましたと。
二度現場を見たのだから、三度目まで見る必要は無い。我ながら良い考えだ。
ほくそ笑みながら帰った僕の家は燃えていた。
村は全焼・全滅。誰一人として生きていなかった。僕は耐えきれず、落ちていた短剣で自分の首を掻き切った。
「クレール、そろそろ支度しないと遅れるわよ!」
ばしん、と胸に衝撃が走り、僕は飛び起きた。
目の前の幼馴染みを視界に収め、こみ上げるものを抑えながら全力で抱き締めた。
「ちょと何!? 何なの!?」
腕の中でサラが暴れるが、それはすぐに収まった。
「どうかしたの?」
どうもこうも、死んだんだよ。
「誰が?」
君だよ、サラ。そしてみんなだ。僕も死んだ。
「悪夢を見たのね?」
ああ、悪夢だ。しかもそいつは覚めても覚めても繰り返される。僕はどうすればいい?
「……よしよし」
答えは無かった。ただサラは、弟たちにするように僕の頭を撫でた。ここは安全だよ、怖くはないよ、と。だから僕は騙された。
四度目は、二人で仲良く燃えた。
「クレール、そろそろ支度しないと遅れるわよ!」
ばしん、と胸に衝撃が走り、僕は飛び起きた。
「……三十三度目のおはよう」
「寝ぼけてないでさっさと準備しなさいっ」
サラはそう言うと去って行った。いつものスープを作るのだろう。
僕は手慣れたどころか習慣となった支度を終わらせ、テーブルに座った。そこから料理をするサラをぽけーと眺める。
今だけが唯一の心安らぐ時間だった。しかしそんな時間はすぐに終わる。僕はいつも通り豪華な食事を終えると、直ぐさま家を出なければならない。無論逃げるという選択肢は無かった。そうすれば死ぬのは、僕じゃ無くサラになる。だったら生きていたところで意味は無い。
「今日は早いのね」
準備の事だろう。僕は一言そう? と返した。
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