第3花

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「それじゃ、またな美代ちゃん!」 西田さんはそう言って背を向けた。 しかし、数歩先でぴたりと止まり、また私のところまで戻ってきた。 「これ、よかったら食べてくれ」 西田さんは私に笹でくるんであるおにぎり(2個入り)をくれた。 「い、いいんですか?!!」 「もちろん、食べてくれ」 私はとても嬉しくなった。 「ありがとうございます!」 「お礼はいいよ!ただ・・・」 「ただ・・・?」 「新撰組には、気をつけて」 それだけ言うとまた笑って走り出した。 私は彼の背中に手を振りながら思った。 (新撰組、かぁ・・・) 私個人としては、新撰組好きなんだよな、と思いながら、もらったおにぎりを食べることにした。 もぐ、もぐ、もぐ・・・ 「うま!!こののりの味といい、塩加減といい、おいし・・・・・・っ!?」 突然眩暈のような感覚に襲われ、おにぎりを苦しさで握りつぶす。 「あっ・・・ま、まさ、かっ・・・?!」 最後に視界に写ったのは、握り潰したおにぎりだった。 ドサッ・・・ 「これでいいですかね」 「あぁ、ありがとな。山崎くん」 山崎、と呼ばれた男は、カツラをさっと取る。 更に顔の皮膚を剥ぐように引っ張る。すると、その下から若い男性の顔があらわれた。 二人の男の目の前には、和室で拘束された、意識のない田原美夫がいた。 「どこの誰か知らねぇが、京の町への侵入者は見過ごさねぇ」 男は田原を見下ろし、そのまま部屋を出ていった。
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