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「とりあえずさ、君の名前教えてください?」
また、にこっと笑って聞かれる。
・・・なんかイライラするのは何故だ。
「美代、です(ほんとは美夫だけど)」
ここでも一応、偽名を出しとく。
「ふーん、そっかぁ」
絶対信じてないよこの人。
「貴方も教えてください、名前」
「僕は、宗次郎だよ?」
はい、絶対に嘘だろーこの人も。
残念ながら私はそういうところだけ目が利くのよ。
「嘘、ですよね?」
「そーゆー君こそ嘘でしょ?」
オウム返しか。
「あなたはどうなんですか?」
「いやあ参ったね。でも君、不審者扱いだから教えない」
にこっと笑う。本日3度目。
あ゛ーーーイライラする!!
・・・なんでだろ?どうも思い出せぬ。
「沖田総司」
「そうですか・・・ってぇえ?」
何故突然名乗った?!
「なんでそんなに驚くの?」
「だだだって!不審者には名乗らないって」
「だってほんとに君が不審者なら、この後死ぬでしょ?」
(えっ・・・?)
「だから別に、言ってもいいって思っただけ」
沖田さんは相変わらずニコニコしたまま、私にとってとても重たいことを言った。
沖田総司と言う名前を聞いて、私がいる場所が新撰組だということは分かった。
そして本人に会えて嬉しいという私の気持ちは、大好きな新撰組の人物によって一気に奈落へ突き落とされた。
「死ぬ、てことは、処刑ですか?」
「うーん。処刑って言うか、排除かな」
もう最悪だ。なんてついてないんだろう。
好きなのに、向こうからは嫌い(ていうか排除)って言われるし。
私の人生最初で最後の江戸街旅行記は、現代に帰らないまま終わってしまうのか。
しかも、たった一日で。
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