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猫のミケ隊長に着いていきながら分かったことがある。
この街が本当に、自分が住んでた街とは違うこと。現代ならビルやマンションがそこらに建っているのに対し、ここは和風の家ばかりだ。
壁は木で出来ていて、屋根は瓦。地面は砂で、コンクリートなんか全くない。
そして街を歩く人はみな和装である。髪型ももちろん違う。
中には刀を腰にさしてる人もいる。
「まさか、これが世に言う『トリップ』ですか。」
もうそれしかありえないな、という自己完結を町並みを見ながら思った。
相変わらず他の人には見えないらしくて、たまに人とすれ違うと、ぶつかるはずだった肩がすり抜けていく。
だんだん気持ち悪くなってきた、自分が。
だってそうでしょ!
生きてて心臓動いてるのに、他人に触れないし話せないし。
まるでお化けとおんなじだ。
はぁ、とため息がでる。その時だ。
「みゃぁあー!」
ミケ隊長は私を置いて走り出した。
「え、ミケちゃん?!!」
少し視線で追うと、ミケちゃんが向かった先には優しそうな女の人が。
他にも猫が数匹集まっていた。どうやら餌を貰っているらしい。
「頼りになるガイドさんも、ここまでか」
更にため息が出そうだったが、ここはぐっと堪える。
これ以上幸せに逃げられたら、いろいろ終わりな気がするからね!
前向きに行こう、うむ!
私は1人道の真ん中でガッツポーズし、再び歩き始めた。
かれこれ2時間前後は歩いた気がする、今日だけで。
けど全くお腹も減らないし、体力もそんなに変わらない。つまりはそんなに疲れていないのだ。
(おかしいな、私運動部とかじゃないからすぐバテると思ったのに・・・)
全く持って、おかしい自分の体である。
(精神的に疲れたし、どっかで休もうかな・・・)
ふと目の前の曲がり角を曲がった時だった。
「あ、花魁が来るぞ」
「何?是非とも拝みてぇもんだ」
「花、魁・・・?!」
曲がった先にいた男性二人の会話。そこに私にとって大事なキーワード「花魁」。
私はその道をまっすぐ走った。
「さすが昔の街、直線の道ばかりだ。」
まるで京都や江戸と呼ばれていた時代の街並みは、T字路など直線の道がほとんどなのだ。
自分のいた道を走り切り、次の十字路に着いた時だった。
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