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シャラ・・・
・・・・・・シャラン・・・
右から小さな金属音が聞こえ、顔を向ける。そこには大名行列(ではなく花魁道中だが)のような集団がこちらへ歩いてくる。
私はその場で息を整える。
呼吸が落ち着いてくる頃には、さっきの集団が私の目の前に来ていた。
集団は、とても光っているように見えた。なにより着物の柄も綺麗で。
(よくこの格好で歩けるな・・・)
という私の内心はさておき、とにかくすごかった。
私はその中に花魁がいないか探した。
花魁がいるなら、それは自分の可能性が高いからだ。
(全盛期の花魁であった前世の私は・・・)
ふ、と目の前を、黒い三枚歯下駄を履き、ゆっくりと歩く一際派手な女性を見つけた。
三枚歯下駄は花魁の履く黒い下駄で、とても重い。
家にもあったので履いてみたが、とても歩くことは出来なかった。
(もしかしたら、自分かもしれない・・・!)
その人の顔を近くまで行って見た、もうぐいっと。
だって私、透けますから。
花魁の真横や少し前を歩く年下の女の子と、体がすり抜けるのを気にせず顔を近づけた。
カラン、ザー、コロン。
カラン、ズー、コロン。
重い下駄を引きずり、歩く音が響く。
少しして、私は顔を見るのをやめた。
そして道の端により、大きなため息をついた。
「・・・・・・私じゃ、なかった。」
そう、花魁は私の前世の人ではなかったのだ。
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