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 人生とは思い通りにならないものだ。    直弘がそう強く感じたのは、これで人生2度目である。  若菜が2歳のときに父親は癌で亡くなり、岡島家の遺産を受け継いだ。「岡島家の人間として」が口癖だった母親も、長生きするだろうと覚悟していた直弘が拍子抜けするほど呆気なく、若菜が6歳のときに心筋梗塞で亡くなった。  介護が必要な両親もいない、贅沢をしなければ死ぬまで金銭的な面で悩むこともなさそうだし、自分よりも10歳若い妻は従順で、自分に介護が必要になったときは一生懸命尽してくれるだろう。  妻の律子の両親は、約400キロメートル離れた他県に住んでおり、律子の兄夫婦と同居生活を送っている。つまり、律子側の両親についても介護を考える必要はない。
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