見る阿呆は踊ってみる。

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「公園のベンチで読書とか、お前、じいさんかよ」  大学、教室の窓側。机に腰掛け、褐色に肌を焼いた友人が笑いながら言う。 「そこじゃないだろ。しかも、誰かはしてる」  僕は普通に椅子に座り、いつもの購買のいつものパンの袋を開けた。 「しないねー、今日の健全男子は日焼けを気にして外にでない」 「嘘つけ、テニスサークルが何を言う」 「それより、その女だな」 「お前が逸らしたんだよ」  友人は軽く咳払いをし、スポーツドリンクを飲んだ。 「……で、ナンパされたわけだよな。その女に」 「違う、なんでそうなる」 「えー、だって初対面だろ? 何もなしに話しかけるか?」 「嫌なことあって、あたってみた。とか」  生憎、そういう不憫な役割には馴れていた。と言っても大したことはない。  仲間の愚痴や、特に目の前に座っている友人の話(主に女性関係)に付き合わされる程度。  僕自身断らない。というか、適当に流しているから別にいいのだ。  しかし、周囲はそれを、僕が断れない性格だからだと思っているらしい。  あまりにも捕まるため、友人が命名『ひ弱オーラ』。少し、ずれている気がするのは、気のせいではないはずだ。 「ひ弱オーラ出てるって? 初対面が分かるかよ。浸透式だぞあれは」  学科内、しかも俺の知り合い限定だ。彼は自信満々に言い切る。 「……は? 誰だよ浸透させた奴」 「オレオレ」  あいつ、何も言わずに愚痴聞いてくれる天才。って言っておいた。  そう自慢げに言う友人の鳩尾を殴る。  しばらく腹を押さえていた。ざまはない。
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