見る阿呆は踊ってみる。

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「春はおかしい、か 」  目を細め、窓の外を眺めながら復活した彼は呟いた。 「なんだよ」  ので、僕は眉をひそめて聞き返す。 「期待が終わる季節ではあるよな、とか思った」 「ん?」 「なーんか、学年変わったり、それこそ中学から高校に上がって、何かが変わる気がして、期待すんじゃん。 でも、実際何も変わらないことに気づいて、終わる」 「ああ」  彼は淡々と、呟く。 「そういうとき桜見て、『わーめでたい』だけじゃないし、そういう意味でなんか気持ちの悪い季節なのかもな」  そう締めた彼の目は、窓越し、咲き始めた桜に向けられていた。 「……」  こういう表情をすることもあるのか。  会う度、スポーツと女のことしか話さないような、阿呆でも。  そんな、若干失礼なことを不意に思った僕の視線の先、彼はふっとため息をつき、ニヤリと笑う。 「でーも。折角話しかけられたのに、何のアクションも起こさないお前は、スタートラインにも立ててない」  訂正、やはりただの阿呆だった。 「ちゃんと返して男を見せれなくちゃ、なあ?」  初対面の通りすがりに訳分からないことをいきなり言われ、男を見せる返答ができたなら、人間として何かが欠落しているに違いない。 「阿呆」  僕は、先ほど思い直した結論を、正直に口に出してやった。
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