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「あのー……」
声をかければ振り向く、見覚えのある顔。
大きな瞳、控えめな唇。
柔らかく風に揺れる、短い髪。
「この前の人ですよね? 公園の」
その大きな瞳は、大きく揺れた。
「いいこと……」
「え?」
「あ、いえっ! えっと、あの、あの時はすみませんっ!」
何かを呟いたと思えば、頬を赤く染め、両手をバタバタ動かして謝った彼女。
僕は苦笑いを浮かべながら、口を開く。
「いや、別に良いん」
「出来心だったんです! ずっと話しかけたかったんです! でも、出来なくて! 周りの娘みたいに新学期の勢いとか、占いの勢いとか借りればいけるかと思って! でも、こんなに髪短くされちゃって! イライラしちゃってそれでっ……!」
僕の言葉を遮り、彼女の口からマシンガンのごとく放たれる声。
その内容のせいで一瞬、脳がパニックを起こし、停止した。
友よ、僕にはここで気の利いた言葉を返すことは、できそうにない。
そんなことできようものなら、僕は自らの人格を疑ってしまう。
「……あ」
彼女は目を見開き、自らの口を覆って固まり、困惑した表情を僕に向けた。
それを可愛いと思ってしまったことは、置いておくとしよう。
それより、僕の頭の中の混乱をどうにかする方が先だ。
「えーっと。取り敢えず、落ち着きません、か?」
「……はい」
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