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こと切れたその顔は、穏やかに微笑んで見える。
呼ぶ声に応えるように、伸ばされた血塗れの手は…ほんの僅かに届かなかった。
この結末が、俺とお前の現実。
「…幸華…愛してるよ…」
細い身体に重みの全てを預ける。
背中越しに脱け殻を抱き締め、冷えた唇に初めて唇を重ねた。
互いの血が混ざり合う。
自分とは違った、甘い鉄の味。
…謝らねえぞ、山崎。
おめえが、幸華を置いて逝ったんだからな。
結局、俺の想いは実らなかった。
それでも。
最後まで共に歩めた刻を、この上なく幸せだと思えた。
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