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フルーレティはふかふかのベッドに座り、そのまま身体を後ろに倒す。路地裏ではベッドで寝るという考えもしなかった。寝るのはいつも堅い石の道。夏になれば暑さで身を焼かれ、冬になれば寒さで震えていた。
今までの生活から抜け出せて嬉しいはずなのに、心から喜べない。暑くも、寒くもない快適な部屋。自分の身体を狙う悪党も居ない安全な場所。
「……………静か過ぎて落ち着かない」
フルーレティが身体を起こす。そして、扉の前に座り、聞こえるはずのない外の音をじっと聞く。さわさわと揺れる草木の音。騎士たちの持つ剣が奏でる金属音。空想ではあるものの、路地裏とは違う音にフルーレティは耳を傾けていた。
「…………ねぇ、レオン」
不意に呟いた言葉で扉の向こうからすぐに返事が返ってくる。扉には鉄格子が付いており、そこから声が聞こえるらしい。
「何かご用ですか、フルーレティ様?」
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