第0話 聖女

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くすんだ水色の髪、煤で汚れた顔。唯一、薄紅の目だけが眩い光を宿していた。集められた少女たちの中で最も美しくも可愛くもない少女。 周りの少女たちは皆、選ばれるはずがないと心に思い込んでいたからだろうか。杖の先端に埋め込まれた宝石が煌めいたその時、少女たちは呆然と杖を見ていた。 司祭が選ばれた少女を立ち上がらせる。少女の表情は仮面のように変わらない。ただ、杖の先端をじっ、と見ている。 「あなた様は我らが神に選ばれた聖女となるべきお方。良ければ名を我らに教えて下さいませ」 司祭が頭を恭しく下げ、少女に尋ねる。少女はちらり、と視線を司祭に向け、また杖の先端へと視線を戻す。 「…………私の名はフルーレティだって。お母さんもお父さんも私が産まれてすぐに死んでしまったの。近所のオジサンが言ってたわ。私は悪魔の子なんだって」 歌うように少女が、フルーレティが話す。司祭たちの眉が歪み、他の少女たちの親がざわつく。 悪魔の子を聖女になれるなら、うちの子の方が聖女に相応しいわ。いや、私の子の方が聖女になるのよ。聖女はあたくしの子が……。 「…………黙って」
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