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「僕も、高校時代まではひどいものでした。
でも、東京の大学に入ってからは、まわりにはそのことを知っている人間はいませんし、大学に就職する時にも、出自で差別されるようなことはなかったですからね。
というか、そもそも戸籍の検閲等ありませんでしたから。」
「まあ、君の場合は出世に出自は関係ないからな。実力が全ての世界だ。
僕の場合は、銀行だったから身辺調査があったからね。」
受けた一流銀行は全てだめだった。
もちろん、落ちた理由などは一切公開しない。
闇から闇へ葬られるだけさ。
表向きには、わが社には出自による入社決定に関する差別などは一切ありませんなどと公言してはいるがね。
中でどのような審査が行われているのかなど、外部の人間には一切知るよしもないことだし、裁判沙汰にしようにも証拠もないわけだ。
入社した後で、会社にその事が発覚して首切りされた場合なら、法律があるから裁判でも戦いようがあるんだが。
まあ、いい。
ところで君は結婚しないのかね。」
「いや、僕は結婚を申し込んでいる相手はいるんですが、相手がなかなかうんと言ってくれないんですよ。」
「彼女とやるべきことはやっているのかね。」「いや、つきあいはじめて3年間、一度もありません。」
「全く不能なのか。」
「そうですね、全く勃たないので、不可能です。」
「そんなに女が嫌いかねえ。
」
「嫌いというんじゃなくて、その気にならないだけですよ。
女好きな男なら、その裸を見ただけでビンビン勃つでしょうが。」
「ふっ、興味がないか。
僕が触るともうこんなになってるのにね。」
「あっ、… うっ、‥ はふうっ、‥ 」
~なに、これ。おやじ同士で。
一緒の部屋を取ったのはそういうことだったの。
男同士のそういう関係は、話には聴いてはいたが、実際に知ったのははじめてだ。
しかも、自分に求婚した男が…~
時間を見ると、すでに午前1時を過ぎていた。
今から家に帰るとなるとタクシーしかない。
浅草から西麻布までとなると、深夜料金だから軽く1万円以上はかかるだろう。
ホテル代も1万5千円払わなければならないし、今日はここに泊まるしかない。
葉子になった江梨は、上戸を耳から外してベッドに横になった。
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