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しかし、佳那子はそんな自分に満足していなかった。
クラスの中に美しく魅力のある女の子がいると、佳那子は激しく嫉妬した。
そして、回りの男子生徒に彼女がちやほやされるのを見ると、なんの取り柄もない自分が惨めに思えた。
しかし、佳那子は世間の自分に対する真面目な子という評価を唯一の頼りにして、今まで自分の生活を守ってきた。
そう、あの日給湯室のすぐそばであの言葉を耳にするまでは。
「学生課の添木さんもう30過ぎてんでしょ。」
「そうよ。でも結婚はおろか、彼氏の噂ひとつもないわね。」
「だって、あの人地味じゃない。いつもほとんどすっびんでしょ。
」
「素顔が地味なのに、化粧もしないなんてあれじゃ男も近づいて来ないわよ。」
「あのまま、ただ年取って死んでくのかしら。ああはなりたくないわね。ああやだやだ。」
顔から血の気が引いていくのがわかった。
普段の会話からは想像もつかない言葉だった。
私は回りからそう思われていたんだ。
知らなかったのは自分だけ。
佳那子の心の中でなにかが壊れた。
と同時に、自分の幸せとは何かという思いとともに、彼女らを見返したいという思いがふつふつと沸き上がってきた。
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