第1章 江梨のエジプト旅行日記

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【エジプトへ】 わたしの名前は、須藤江梨。 古代エジプト史の書物にファラオの魔力を持つ鏡の記事を見つけたのは3ヶ月まえだった。 多くの探検家がそれを探しに出かけたが、それを見つけて帰ってきたものはいなかった。 そして何人かの者は行方不明になったままであった。 何故かその記事に魅かれるものがあって、厚い入道雲の立ち昇った8月の暑い日、わたしはファラオの魔法の鏡を探しにエジプトへ旅立った。 だが、魔法の鏡がどんなものなのかをわたしは知らなかった。 しかし、なにか特別な力を持つ鏡であることは書物に書かれていた。 エジプトに着くと、次の日さっそくわたしはファラオの墓を尋ねた。 記事によれば、魔法の鏡は第6世のファラオの墓の中にあるはずだった。 わたしはあえて観光コースを外れて歩いていた。疲れて壁にもたれた時、ふいに壁がどんでん返しのように回転し、わたしは壁の裏側へと投げ出された。 外に戻ろうとしたが、壁はいくら押してもびくともしなかった。 薄暗い洞窟の中の壁の裏側には、古代エジプト文字で何かが書かれていた。 当時、わたしは東京の港区にある私立大学で古代エジプト史の研究をしていた。 ある程度の古代エジプト文字は解読できた。 そこにはおおよそ次のようなことが書いてあった。 この壁は100年に一度だけ開く。 そして一度開いた次の日、一度だけまた開く。 ただし、二度目はファラオに選ばれた人間にしかその扉は開かれない。 ファラオの墓の中で不思議な鏡を見つけた者だけが、その鏡の裏に書かれてある第1の呪文をとなえて再び扉を開けることができるのだ。 そして、その鏡の裏に書かれている第2の呪文をとなえると自分以外のどんな人間にも変身できると書かれていた。 わたしは薄暗い洞窟を見回した。明かりは全くなかったが、至るところに生えている 光るコケがかろうじて洞窟の中を照らしていた。 わたしは、立ち上がって洞窟の奥へ向かって歩き始めた。 ガシャッ! ふいに何かにつまづいた。 顔を近づけてみるとガイコツだった。 100年に一度だけ開いたこの壁の扉の中に閉じこめられた過去の探検家達の残骸があちこちに散らばっていた。 ファラオの鏡を見つけられなければ、わたしも同じ運命を辿るのだ。 しかも期限は明日までしかない。 その後に発見して第1の呪文をとなえても、もう扉は開かない。
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