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【洞窟の中】
だから、わたしは鏡を持っていないガイコツを見るたびに、誰か鏡を見つけてしかも洞窟から出られなかった探検家がいないかと、ガイコツにぶつかるたびにそのまわりに目をこらした。
そうすれば、わざわざ鏡を探さなくてもよくなるからだ。
しかし、そのようなガイコツはいるはずもなかった。
魔法の鏡を見つけて、しかも洞窟から出られなかった探検家は、ファラオの魔力によって鏡はその手から離されてもとの秘密の場所へ戻されてしまうのだった。
だが、そのことは壁には書かれていなかった。
洞窟の中で携帯電話は使えなかったが、時刻はわかった。
わたしはさらに前に進んだ。
その先洞窟は2つに分かれていた。
この先洞窟がいくつにも分かれていたら、きっと迷路になっているに違いない。
わたしは、壁に印をつけながら2つに分かれた洞窟の左の洞窟の方へと進んだ。
一時間ほど前に進むと、足元にぴちゃぴちゃと水が跳ねる音がした。
水はどんどん深くなり、膝まで水に浸かった。
「どうしよう?」
もっと深くなったら危険だ。
だが、ファラオの魔法の鏡がそんなに簡単な場所に隠されているはずはない。
左の洞窟に入ったのは、むしろ正解だったかもしれない。
わたしはさらに前に進んだ。
腰まで水が来た。
しかし、まだ水は深くなりそうだった。
やがて水は胸まできたが、わたしは前に進むのを止めなかった。
水はとうとう首まできた。
わたしはさらに前に進んだ。
とうとう鼻から上しか、水の上に浮かぶ部分はなくなった。
わたしはゆっくり前に進んだ。
しかし、幸いなことにそこから先、水位は次第に下がっていった。
向こう岸に着くと、下着までずぶ濡れだった。
携帯電話は防水タイプだったので無事だった。
洞窟に入ってから3時間が過ぎていた。
すでに午後の7時になっていた。
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