第1章 江梨のエジプト旅行日記

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【ファラオの鏡】 洞窟はさらに奥へと続いていた。 前に進むと、次第に洞窟は狭くなっていった。 とうとうはいつくばって進まないと前に進めないほど洞窟は狭くなった。 へたに進むと、挟まって前にも後ろにも行けなくなりそうな狭い穴を、それでもわたしは前へ前へと進んでいった。 どれくらい暗い穴の中を進んで時間がたったのだろうか。 ふいに視界が開けて、わたしは大きな部屋にたどり着いた。 携帯の時間は午後の11時を示していた。 部屋の真ん中には立派で豪奢な机が置かれていた。 その上には、美しい装飾をほどこされた鏡が静かに虹色の光を放っていた。 これが探していた鏡か!? とうとう見つけた!!! これまで多くの探検家が探しに来て、果たして何人の者がこの鏡にまでたどり着いたのか。 それとも、自分が最初の発見者なのか。 ともかくこれを持って、すぐに洞窟の入り口に戻らなければならない。明日の夜0時を過ぎれば洞窟の扉は開かなくなるのだ。 わたしは鏡を持つと、今来た洞窟の道を戻り始めた。 帰りは鏡を持っているため、来た時よりも、前に進むためにははるかに時間がかかった。 洞窟の入り口にたどり着いたのは翌日の午前0時5分前だった。 わたしは急いで鏡の裏に書かれている第1の呪文をとなえた。 「∈∠⊆⌒∇∂∝」 扉はゆっくりと開きまた閉じた。 わたしはもとの世界へ戻ってきた。 しかし、わたしが洞窟の外へ出て壁の扉を閉じると、その壁の裏側には新たな文字が浮き上がった。 § 変身できるのは100回まで。 もし、それ以上鏡の呪文をとなえて変身しようとするものはファラオの呪いを受ける § わたしは、あまりに急いで外へ出たので、その文字が浮き出るのに気がつかないままファラオの洞窟をあとにした。 このとき壁に浮き出たファラオの呪いとはなんなのか? わたしはそのことを知らぬままエジプトを後にした。
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