7人が本棚に入れています
本棚に追加
その後、斉藤から謝罪とともに再びつきあってほしいとの申し出があり、セックスの相性が抜群だった斉藤とはほどなく関係が戻った。
美容師の弓木は、葉子の自尊心をくすぐる相手だった。
ホストのように葉子の機嫌を取るのがうまかった。
交際の費用は、大抵葉子が支払った。
ひと月に一二度映画を見て、食事をするくらいでたいした出費ではなかった。
性交渉を求められた時は、彼のマンションへ行った。
セックスは巧くも下手でもなかったが、妻木にセックスを拒否されていたので、同じみじめな気持ちを相手に味わわせるのは嫌だったので、自分から求めることはなかったが、弓木に求められれば体調が悪い時以外は拒否しなかった。
自分は悪い女なのだろうか。
あれこれ考えているうちに、疲れが出たのか、不意に眠気に襲われて葉子はベッドに倒れ込んだ。
どれだけ眠っていたのか。
目が覚めると、時計は深夜の2時を回っていた。
携帯に、斉藤からの留守電が3回も入っていた。
最初の留守電は、夜の10時15分だった。
「どうしたんだよ。ホテルの前で待ってるんだけど。」
2回目の留守電は、10時半に入っていた。
「キャンセルならキャンセルと連絡してくれ。俺だって次の予定があるんだ。」
セックスの巧い斉藤に複数の相手がいることは、容易に想像がついた。
3度目は11時だった。
「ふざけんなよ。いつまで待たせるんだ。俺をほっぽらかして他の男とでも寝とんのか!!」
通話はすぐに切られた。
真剣な交際ではない。
当然、急病や事故ではないかなどと心配してくれるわけもない。
相手にとっては、複数いるセックスフレンドの一人に過ぎないのだ。
また、喧嘩別れか。
仕方がない。
葉子は留守電に返事を入れた。
「ごめんなさい、急に体調が悪くなって寝てしまったみたい。」
~当分また、交際断絶だわ~
葉子は、ほっと軽いためいきをついて、そのまままた寝入ってしまった。
いつのまにか、知らず知らずのうちに疲れがたまっていたようだった。
最初のコメントを投稿しよう!