『No.029』

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響きわたる銃声と怒号。 その中を。 僕と姉さんは手を繋ぎながら、渾身の力で駆け抜けていた。 「姉さん!! 左!!」 建物の影から銃を構えた警備員が立ちはだかった。 姉さんが警備員に手を翳す。 刹那。 姉さんの手から焔が走り出た。 肉の焦げる臭いと絶叫。 臆病な僕は見ることができなくて。 姉さんの背中にしがみついて、震えていた。 姉さんが荒く息を吐く。 「姉さん、大丈夫?」 「私は大丈夫。あなたこそ……大丈夫なの?」 限界以上に力を行使し、真っ青な顔で、僕のことを思いやるこの人が痛々しくて。 「ごめんなさい……。姉さん、本当にごめんなさい……」 「何であなたが謝るの」 姉さんは笑いながら答える。 「だって……」 全ては僕のせいだから。
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