一生の不覚

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……マジで誰?  働かない頭でこの人の事を思い出そうとする。  昨日私……そう考える度、頭の中をズキズキと痛みが走る。  まだ抜けきれていないアルコールが脳みそをグチャグチャと掻き回す。  ダメだ。  全っ然思い出せない。  こめかみに指を当て俯く私に、 「出来れば、見ず知らずのあんたに一晩ベッドを貸して、自分は仕方なくリビングのソファーで小さくなって寝た心優しい俺に感謝しつつ、早く出て行ってもらえないか」  その人は呆れ顔のまま、その作ったような長台詞を一気に言い切った。 「す……すいません!」  私は慌ててそう叫ぶと、急いでベットから飛び降りた。  髪を少しだけ手櫛で整え、机の上に置いてある鞄とコートを引ったくるようにして小脇に抱える。 「あの……本当にすいませんでした」  私はそう言ってその人に頭を下げると、正しく逃げるようにその部屋を後にした。
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