一話 首なし女子高生

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目覚めは最悪だった。 クーラーが壊れ、熱帯夜で深くは寝付けなかったから。 暑い中、休息の日々が今日から2学期という授業の日々にシフトするから。 もう一つは観飽きるほど繰り返す、幼き頃のトラウマの悪夢を見てしまったから。           ◆◆◆ 8月25日。大抵の高校はこの時期から2学期を告げる校長の長々とした話を聞く日でもあるだろう。 もしくは学年ごとに出された課題、夏休みの宿題を提出する日でもある。 それらの過程を終えた一般学生は昼までに終了するこの日は久しぶりに出会ったクラスメイトや、長期休暇を過ごした日々を話のネタにしながら各々帰宅していくだろう。 地方都市に設立されている県立湯鎖高等学校も例外ではない。 湯鎖の校舎にも夏休みの談義が廊下に小さく響く中、1年E組のクラスは全員集まり、そして担任である体育教諭平山教員はうんざりしている生徒を睨み続けていた。 「夏休み明けから、集まるのもなんだが。いい加減決まらんのかね」  がっちりとした図体と硬派な顔立ちに合ったのど太い声が教室に響く。  なぜこの状況に至っているかというと。  黒板にはびっしりと問題の論点が書かれていた。 サウンドアート 空き缶による巨大な人物像 張り紙による巨大絵 ブルーシート全体での張り紙の写真絵 張りぼての古城 マイケル・ジャクソンの写真のモザイクアート 古着の寄せ集めで作るジブリキャラ象 自作ゆるキャラ      ……etc  これらすべて文化祭への出展作品候補。  一年生は出品作品がビックアートと決まっている。  文化委員二人が採決を取るも挙手もちらほら、とても決定の判断がしにくい。というのも、別段文化祭までの期間が間近にせまっているわけでもないので、クラスメイトのほとんどがピンときていないのでモチベーションも無く、なかなか決まらない。  どうして夏休み開けた直後に文化祭出展作品を決めているのかというと、この担任がせっかちなだけなのだ。確かに展示物を制作する期間が早期的になればなるほど効率も良く、準備も早くできる。しかし夏休み開けて早速の議題が文化祭に向けてなのだ。体育祭の方が3週も経たず始まるのに。  だが夏休みに入る前には体育祭の種目選別選手も決めてしまうほどのせっかちな教員なのは1学期からの付き合いでクラス全員が慣れてしまった。
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