一話 首なし女子高生

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「まあ、先生。候補がこれだけあるのでいいじゃないですか。1時から職員会議もある事ですし」 文化委員の女子生徒はなだめる様に言った。正直な話、話し合いなんて終わらせて、とっとと下校し自由時間に明け暮れたいのだ。それはクラスメイトの総意でもある。 平山教諭は自身の腕時計を確認しつつも、タイムアップかと小さなため息を突いた。 「まあそうか。とにかく、今週中に決定すること。文化委員、意見を調整しておくように。あと、教室は午後から点検があるので鍵を掛けなくてもいいからな」  不満ながら言うと教師は教室から退出する。やっとせっかちな担任から解放されたのか、教室の空気が柔らかくなり、騒々しくなった。  各々友人との話や帰宅の準備をし始める。夏休み明けなのかクラブ活動を開始するのも少数程度なので大半は帰宅や午後の時間を有意義に消費しようとしている。その中で日差しが強い窓側席の中性的な顔立ちの男子が、両手を組んで頭上に挙げ体のほぐれをとるためを伸ばした。 「んんっ。やっと終わった、ふう」  滝沢水綺は脱力して腕が垂れ下がり、口から重々しかった空気を吐きだす。 「ほいさ、滝沢」  水綺は後ろから声を掛けられ、振り向くと中学からの友人羽崎だった。男子の中では顔立ちも良く成績も悪くない、入学当初は1,2度告白をされているところを水綺は見かけている。  しかし、恋愛に興味がないのか心無い言葉や一般高校生では答えにくい世界情勢や化学では証明されていない現象について討論できるかなどの返答で振ることで、純粋な恋心を持った女子生徒は挫折している。 「ん? 羽崎、どうした? 昼飯?」  正面の角版の上に掛けられた時計は、12時と22分の位置に針を指していた。水綺たちのクラス以外の生徒はほとんど帰宅や昼飯を食べに校外に出ている。 「いや、さっき、こっそりとおにぎり食っていたからいいや。そのまえにさあ、滝沢」 「なんだ? 何かの手伝いか?」 「宿題を職員室前まで運んでほしいのさ」 「学級委員のお前の仕事だろ」 「ちょっち、職員室にお呼ばれ。夏休み中のことでな。お叱りを受けに」 「中学と変わらないことを。内申とかに響くぞ」 「だーじょぶ。成績良かったら問題ないし。お叱りといっても、無断外泊や深夜の繁華街を出歩いた程度を教員に見られた小さな事だろうし。注意程度だろう」
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