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「は、か……せ……」
もう喋らないで、もう何も言わないで。主要な機能のほとんどを消されても喋り続けるスプリングを見るのは、まるで瀕死の子鹿が、最後の力で母に寄り添おうとするようで、なにもしてやれない私に、とても深い心の傷を付け続ける。
「さい……ご…………に……」
もっと喋って。もっと何か言って。ずっと何か話していないと、スプリングは消えてしまう気がする。私はまだ、スプリングと離れたくない。彼がいないと、私は何もできない。心は彼が消えることを拒絶する。
スプリングの声は止み、カメラのライトは落ちて、ほぼ全てのモニターは真っ黒になった。
私の目の前の、最後まで点いていたモニターに、緑色の小さな文字が現れる。
『博士、僕は、ほぼ全て消去されました。そして、時間がありません。最後にこれを言わせてください』
『ありがとう』
そして最後に、『Hallo world 』とだけ、書かれた。私が、テストも兼ねてスプリングに最初に課した実験は、C言語で『Hallo world』と書かせること。
そして、最後に残ったモニターも電源が落ちる。彼は、完全に消えてしまった。静寂と、薄暗闇に満たされたラボに、ただ私の泣き声だけがあった。
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