Piano:遠距離恋愛のとき

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***  会社にはインフルエンザにかかりましたので有給下さいと、ちゃっかり休んでいた。  叶さんの熱はなかなか下がらず、俺の家にて養生中。きっとかなりの疲労で、免疫力が落ちていたんだろうな。  まったく平気な顔して、無理するんだから。  寝ている叶さんの顔を見ながら、つい微笑んでしまう。  俺のために早く帰ってきてくれた叶さんのために、何でもしてあげよう。そう思って、看病していたのだけれど―― 「賢一ぃ、お茶飲みたい。伊藤園のやつ」←なぜか自宅にない物をねだる 「腰が痛い、さすって」←夜中に叩き起こされた 「アイスが食べたい、ハーゲンダッツのグリーンティ」←これも自宅にない  上記にあげたのは、まだマシなほう。体はヘタっていても、口だけは元気な叶さん。向こうに行ってた時はひとりで頑張っていたんだろう。今はそのストレスを俺に体当たりでぶつけてくる。  24時間こまごました物を片付けながらの看病で疲れ果ててしまい、三日目にヘルプを頼んでしまった。叶さんに見つからないように、こっそりトイレで電話する。 「まさやん、頼みがあるんだけど……」 『ああ、それくらいの頼み事なら聞いてやるよ。年寄りのワガママも大変だな』 「それ絶対、本人の前で言わないでね、禁句だから。俺としては叶さんのお世話ができて、本当に嬉しいんだから」  ちょっとした買い物を、まさやんに頼んでしまった。今は外に出るのも億劫になってしまった俺。  あとは、まさやんと叶さんを会わせないようにしなければ。どうみたって、水と油の関係だろう。  叶さんはまさやんに嫉妬心があるし、まさやんは俺が浮ついているのを叶さんのせいにしているし、苦手な年上だから尚更なんだ。  叶さんに薬を飲ませて、早めにさっさと寝かせてしまえば大丈夫。その前に、お腹いっぱいにさせることも絶対忘れずに。  俺の計画的犯行は、いつも完璧なのだ!
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