Piano:決別

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Piano:決別

 2度目のアプローチは、まさやんが彼女と付き合い始めたときだった。  結婚は無理でも、フィアンセ的な関係じゃ駄目かなぁと考えた俺。思い切って指輪を購入!(しっかり給料3ヶ月分だぜ)前回のように改まった状態じゃなく、さりげなく話を切り出そうと考えた。 「まさやんにも、やっと彼女ができてさ。毎日が幸せそうなんだ」    叶さんの自宅でお互い仕事を持ち帰っていたので向かい合い、まさやんについての近況報告した。  俺の話に、不思議そうな顔をする叶さん。   「あんだけ格好いいのに、今まで彼女がいなかったのが謎すぎる」 「ああ見えてまさやんってば、照れ屋さんだからね。俺がきっかけを作ってあげなかったら、まだ片想いしてたと思うよ」  俺が言うと、かなりイヤそうな顔をした。 「人の恋路に首を突っ込むなんて、下世話なことをするんだね。男なんだから、自分の力で何とかすればいいのに」 「世の男性全員が、押しの強い人ばかりじゃないんだよ」 「そういえば賢一は初めから押しが強かったもんね。いきなりプロポーズしてきたし」  呆れた眼差しで俺を見る。その視線を受けて、傍に置いてあった鞄から指輪が入ってるケースを取り出して、叶さんの手元に置いた。 「何これ?」 「結婚……今は無理でも、これくらいは受け取ってほしくて」 「やだ」  あっさり拒否られた。何で!? 「もう少し、ムードのある所で欲しかった。何で今このタイミングで渡すかな」  ガーン( ̄□ ̄;)!! 戻される指輪……。 「人が安らかに寝てるときにこっそりと指のサイズを測ったり、今日に至っては変に落ち着きなかったり、全部バレバレなのよ」    俺の考え、休むに似たり……。こうして2度目のアプローチ大作戦も、見事に失敗したのである。
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