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「っつーか何? やっぱ俺のこと嫌なわけ?」
やっぱって何なんだ、と思いながらも、触れてはいけなかったのだろうかと梨花は考えた。そういえば、あまりキヨミツと翔太が話しているところを見たことはない。
昼休みを思い出す。「翔太は畑中先生とデキている」と言ったり、そのすぐあとに「この学校はイカレてる」と言ったりしたことを考えると、翔太のことを良く思っていないのかもしれない。とすると、翔太はキヨミツにどう思われているか感じているのだろうか。
「き、嫌いとかじゃなくって、そっちの方が便利かなって思っただけ」
――本当に、翔太は畑中先生と付き合ってるのかな。
屈託のない笑顔をまっすぐに向けてくる翔太を見ていると、梨花には信じられなかった。教師と生徒の恋愛なんてある種の禁断だ。開けっぴろげな翔太とはイメージが重ならない。
「じゃあ決まりな。カウンセリング終わったら待ってろよ。一緒に帰ろうぜ」
以前ミリアが「畑中ってコケシみたいだよね」と言っていたのを思い出した。梨花はたしなめたが、それは一笑に伏せないほど似ていたからでもある。やはり、華やかなオーラを持つ翔太とはかけ離れていた。人は外見で判断しちゃいけないとはいうけれど。
翔太にOKの返事をすると、ちょうど良く前のドアが開いて萌が戻ってきた。
『――綾川梨花さん、綾川梨花さん。小会議室まで来てください』
スピーカーから梨花を呼ぶ声が流れ、慌てて席を立つ。翔太に行ってらっしゃいと声をかけられると、遠くの席でミリアたちが鋭い視線を向けてきた。
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