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「何事だ?」
眉をひそめる彼に、ミリアが答える。
「変な映像が教室のモニターからいきなり流れてきて、その場所が階段らしくて……」
「この階段でもねーなー」
牧野が何か言うより早く、由紀彦の声がした。やせ型で分厚い眼鏡をかけており、いつもその団子鼻をしきりに触っている。
「――誰か、放送室でいたずらをしてる人がいるようだな」
おそらく、あらかじめ録画した映像を誰かが放送室から流したのだろう。
「仕方ないから放送室を見てきてくれ。ああ、翔太は南先生の面談を受けるのが先だぞ」
翔太が渋々部屋に入り、そのほかの全員は一階下の放送室へと向かった。梨花が教室に戻ろうか迷っていると、牧野が声をかける。
「お前はちょっと来い」
「え……何ですか?」
翔太はすでにカウンセリングを受けているため、ここには二人きりだ。
「良いから黙ってろ」
いつも梨花にだけ見せる、冷淡な横顔。今朝よりも険しさを増した表情に、梨花は恐怖を感じた。
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