一人目

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 椅子には、南らしき者の姿があった。  彼女が座っているのは、本来ならカウンセリングを受ける者用の椅子だ。青い布張りの椅子に華奢な身を預け、なぜか脳波測定用のヘッドギアまで被っている。 「なんだあの帽子?」  南に叱られないようにか、どの生徒も部屋に入ろうとはしなかった。  ようやく牧野は、ゆっくりと彼女の前に歩み寄る。気楽に騒いでいる生徒たちが、あまりに対照的な彼の態度を訝しむ。一体牧野はどうしたんだ、と数人が彼のあとをつけるように部屋の中まで入ったところで、ようやく事態は認識された。  南の眼球が、頬の位置にまで垂れ下がっていた。  叫んだまま固着されたような口も合わせて、顔に大きな穴が三つ空いているように見える。生前の可愛らしさは感じられず、それはムンクの叫びに似ていた。首にはコードがぐるぐると巻きついており、その先にはモニターがぶら下がっている。華奢で白い足のあいだから、尿らしき液体が漏れていた。 「うひゃあああっ」  情けない声がデカ森の口から漏れる。ミリアたちも甲高く叫び、三人で手を取り合って震えた。テツはなぜか半笑いのまま、興奮したように言う。 「マジかよ、本モンじゃん!」
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