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ふざけるな、と翔太が叫ぶより早くキヨミツが立ち上がった。それだけで、クラス中が彼に注目する。いつもの三白眼に凶暴性をにじませて、テツとデカ森を睨みつけた。
「黙れクソが」
瞬時に二人とも、萎えるように勢いを失う。
「うるせえんだよ。豚とブサイクまとめて殺すぞ」
「た、ただの冗談じゃんかよぉ」
弱々しい声で、デカ森はとなりのテツに視線で助けを求めた。キヨミツとは充分に離れているのに、その距離は恐怖を薄めることがない。
「存在がウゼぇっつってんだよ。今すぐ死ね」
暴論に何も言い返せないままデカ森が俯く。テツも苦々しい表情のまま、彼から視線を外した。
「あとそこのクソ女。欲求不満なら黙って隣りのブタとでもヤってろよ」
「……キモいから絡まないでくれる?」
ミリアがすごい目つきでキヨミツを睨む。しかしその声は、いつもより小さくざらついていた。
「お前の顔の方が数百倍キメぇよ。二、三発殴って調整してやろうか? あ?」
彼が今まで女を殴らなかったのは、単に女で逆らう者がいなかったからだ。これ以上強がればただでは済まない、とミリアも悟ったようで、悔しげな表情のまま視線を逸らした。
それ以上誰も反論しないのを確認すると、キヨミツは大きく舌打ちをして後ろのドアに歩み寄った。乱暴にドアを開け、廊下に出ていく。
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