捜索

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 翔太も立ち上がると、何を思ったか彼のあとを追った。廊下を左方向に歩いていくキヨミツの背中に声をかける。 「待てよ!」  凶暴な目つきのまま彼が振り返る。 「さっきはサンキュな」 「知らねえよ。勘違いしてろボケが」 「とにかく嬉しかったんだよ」  ひるむことなく、押し付けるように翔太は言った。 「なあ、ついでに一緒に梨花探してくんねえ? 絶対まだどっかにいるはずなんだ。早く見つけないと、何か起こりそうで怖ぇんだよ」 「なんで俺が」 「好きだからだよ」  一瞬目を丸くしたキヨミツに、慌てて翔太が訂正する。 「違うぞ、お前じゃねーぞ! いやお前も嫌いじゃないけど、そうじゃなくて梨花な!」 「そこは勘違いしねえよ」  幾分力の抜けた様子でキヨミツが言う。 「で? どこ探すんだ」 「分かんねーけど、この学校のどっかだと思う。お前怖ぇから襲われる心配もねーし、二手に別れようぜ」 「見つけたら、どうすればいい?」  この学園は、携帯電話の所持自体が禁止されている。寮においてもそれは同じだ。なので、教師以外に携帯電話を持っている者はいない。 「んー……じゃ、こうしようぜ。俺はこの廊下を小会議室方向に歩いていって、そこの階段から上って、四階を調べる。キヨミツはこのままもうひとつの階段まで調べていって、そこから降りて二階を調べてくれ。お互いに終わったら一階の玄関の下駄箱んトコで落ち合おう。まだ見つかってなかったら、そっからふたりで一階を探す」 「分かった」 「頼むぜ相棒!」  ふ、と短く息を吐く音が聞こえた。キヨミツが笑ったのだということに気づかないまま、翔太は捜索を開始する。  彼が四階の化学準備室付近に到着するころ、別の場所ではまた違う動きがあった。
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