第1章

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探偵をしていた。 大学の間にアルバイトで浮気調査の張り込みの手伝いやなんやかんや。 他人の秘密を知るのが楽しくて、そのまま就職してしまった。 毎日浮気調査や素行調査。人の裏側を見る毎日。 容姿が良かったから、別れさせ屋をやらされたり、浮気調査の依頼相手のご婦人に惚れられたり、粘着されたりして。 楽しさはどんどん薄れて行って、調査はただの作業になり…… 気がつけば立派な人間不信になっていた。 自分の中の価値観は全部崩れていた。 見た目は中身を裏切る醜い世界をうんざりするほど見すぎて。 元々はバイセクシャルだったのだが、探偵の仕事をしている間に運悪く酷い女を何人か見て、女相手には勃たなくなった。 別に性欲を処理するのは男でも構わなかったから、適当にその系の店に行き男を拾ってはその場限りのセックスをした。 そのうち、眠れなくなって。 まあこんな仕事をしていたらしょうがないさ。 そう思っていたら、突然これといった理由もないのに猛烈に死にたくなって、自分が完璧にすり切れてしまったのだと気がついた。 間に合うかもしれないと生活を変えることにして、探偵を辞めて引越しをした。 定時で帰れる仕事について、自分を少しずつ建て直して。
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