chapter1

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駅前のベンチで一人、缶コーヒーを飲んでいる者がいた。 友人には鎖骨と呼ばれている。今日は好きな人と会うことになっていた。 目線の12センチ上。そこが好きな人と目が合うところ。 身長差があるからこそ、真っ直ぐ見ると目が合わない。 だけれども、身長差があるからこそいいんだ。 身長差があるから、抱きしめられた時に包まれる感覚があるから。 もうすぐだ。 もうすぐ来るはず…。 腕時計を見ながらひたすら待つ。 すると改札の向こうに彼の姿が見えた。 小さく手を振り、こちらへ近づいてくる彼。 飲み干した缶コーヒーの缶をゴミ箱へ投げ入れ、彼の元へ駆けつける。少し見上げた視線の先には優しく微笑む彼の顔。
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