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綾子は口紅は会社に行ってから塗ることにした。今朝はリップだkでを唇に塗って会社へと出掛けた。
「あら。綾ちゃん、おはよう」
「お、おはようございます」
会社に行こうと家を出た綾子は運が悪いのか、ゴミ捨てに出てきた博士の奥さんと鉢合わせた。
「これから、会社なの?大変よね。このところ、不景気でしょう。収入がどんどん減って支出が増える一方で大変なのよ。あの人、甲斐性なしだから私もパートに出ないといけないし。パートにまで不景気の波が押し寄せてくるし。あの人にも、少しは働いてもらいたいものよ。このところ、おかしな化粧品を開発していたみたいだけど、無くしてしまうし。本当に、あの人ときから・・・」
「あ、あのすいません。私、会社にいかないといけないので」
「あら?ごめんなさい。つい、話し込んでしまったわ」
博士の奥さんの話は長い。聞いた話しでは一時間は喋り続けることができるそうだ。話し好きなのはいいことであるが、長すぎるのも問題だった。
綾子は適当なところで切り上げると、会社へと駆け足で向かった。もちろん、会社に向かう途中、どこかの化粧室に入って口紅を塗るのも忘れなかった。
色合いがいい。博士はいったい、何のつもりで口紅を作ったのだろうか。やっぱり、奥さんへのプレゼントなのだろうか。男性が塗るにはちょっと、派手すぎる。
博士が口紅を作った理由。そんな疑問も仕事の忙しさですぐに忘れることになる。いつか、口紅は返そう。そう思うも、口紅の魅力に取り憑かれ、返すのが日を追うごとに億劫になっていた。第一、控えて使っていた口紅であったが、気がついたら、半分まで減っていた。これでは、ますます、返し辛くなる。
「ねえ、綾子」
「なに?」
「最近、大人しいけど何かあったの?」
「何かって?」
同僚に聞かれても、綾子にもピンと来なかった。いつも通りでいるつもりだった。
「だって、このところ、物静かで大人びたというか・・・」
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