第一章 偶然という名の必然

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-あの日、あの時、あの場所で君と会えなかったら・・・- 昔、子供の頃に母親が口ずさんでいたのを思い出す きっと運命というのに「たら・れば」なんてものはなくて・・・ きっとどんな道を歩もうとたどり着く場所なんだろうと思う きっと、出会いは生まれる前から敷設されたレールにある駅のようなものなんだ だから、彼女との出会いも生まれる前から決まってたんだ・・きっと とにかく素行が悪いと評判だった彼は、いつしか両親からも見放されて、まだ成人もしていないというのに自分で部屋を借りて住んでいた 「これがアンタに渡す最後のお金よ」 吐き棄てるように祖母が渡したお金 泣き崩れる母親に一瞥もくれず、少年は家を出た 鑑別所から帰ってきてたったの2日 それが生家での最後の思い出となる そんなことは心底どうでもよくて 彼にとっては明日からどう生きていくかだけが重要だった 母子家庭なんて最近は珍しくもないし、自分が不遇だと思ったことはなかった ただ、「あんたのために」と、口癖を言う母親の顔がどうしてももう見ていられなくなっただけで 別に憎くはないが、愛してもなかったから家を棄てることにしただけだった -ああ、そろそろ仕事の時間か・・- 夢で生家が出てくるたび複雑な気持ちになる 家を出て数ヶ月経つものの、気にならないといえば嘘になる でも、新しく見つけた仕事をこなしていくうちにその気持ちも薄れていくはず・・そう信じることにした 身支度をさっと整えるといつもより早めの出勤をする オーナーに言われて、今日は食事に付き合うことになっていた 予定を確認しながら川沿いの道を歩いていると、川からの風が頬を撫でた 風にやさしさを感じる季節になったんだ そう、風を体で感じながら駅に向かおうとすると、目の前を白い帽子が横切った 「すいませーん!取ってくださーい!」 すこし息を切らせて近づく声
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