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「すいませーん」
二度目の声
目の前ですこし背の高い植物にひっかかった帽子を、思わず手ですくいあげた
声のほうに顔を向けると、声の少女はもう横まで来ていた
「ありがとう!」
肩で息をする少女
そんな距離はなかったように思うけど・・
白いワンピースを着た少女は、川からくる風と夏の始まりを告げる日差しに包まれていた
それはとてもやわらかく、やさしい感じがした
「いつも飛ばされちゃうんだよね。」
帽子をかぶると顎ヒモをきちんと通す少女
帽子を渡し終えるとそそくさと向きなおす少年に少女は言う
「ねえ、ありがとうってば」
右手をつかむ
ねえ、ともう一度
「なんだよ?もう用事は済んだろ?」
「済んでないよ。ありがとうって言ってるんだから、『いいえ、どういたしまして』って返してよ」
「はぁ!?なんでだよ。面倒くせえ」
「いいから!ありがとう」
なかなか少女は手を離そうとしない
「ああ、もうわかったよ。どういたしまして!!」
すこし強い口調で叫ぶ。
明らかに満足していない少女の顔
「かわいくない・・!」
顔を膨らませる少女
知るかよ、と吐き棄てる少年
「ねえ、君名前は?」
「関係ねえ・・!」
「関係なくない!」
「しつこいな!手を離せよ!もういいだろ!」
明らかに迷惑と言う顔をした
「ごめん・・」
少女の手から力が抜ける
顔には明らかに落胆の色
正直すこしバツが悪かった
ポケットから名刺を出す
「ほら・・・」
高級そうなすりガラスのような名刺
そこには源氏名らしき名前が書いてあった
-蒼史 Soushi-
「俺の名前だよ」
少女がまじまじと名刺を見つめながら聞く
「苗字は?」
すこし間をおいてから言う
「棄てたんだよ。家と一緒に・・」
「そうなんだ・・・」
それだけ告げると少年はまた駅に向かって歩き始めた
「私の名前は咲!相原咲だよ!」
すこし距離ができてから少女が言った
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