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ーーー漸く、"神使"となる覚悟ができたか。
これよりお前はヒトではない……我が名に心身を捧げ、万物を屠れ。
残響。
内から外へ。
血潮がたぎり、夢幻が現界する。
「……ッは……!」
堪らず、声を漏らす。
……狂気が、顔を覗かせているような感覚。
並々ならぬ力の流動、それに身を任せて地を蹴り出した。
空気の壁をぶち破るように易々と、その身は人間の限界を越えて、跳んだ。
……今なら、どんなことも出来ると思えた。
「……ッ!?なんだ!?」
「退却!退却をぐぁ!」
一蹴りでワスイ軍の中腹まで跳び、ぐしゃりとした感覚を足に刻みながら、突然の襲撃に狼狽える群を見渡す。
「ーーーふむ。所詮、この程度か」
無意識に口が開いていた。
声を出したのは紛れもなく自分自身。
だが、それは、自分の声ではなかった。
「つ……潰せえぇええ!!」
一際きらびやかな具足を纏ったワスイ兵が叫ぶ。
それに推され、周囲の兵から剣が、槍が突き出された。
……成る程、あれが此処の将か。
「ーーーははっ……精々、抗ってみせろ」
敵の切っ先が肌に触れる直前に屈む。
金属と金属のぶつかり合う悲鳴を頭上に聞きながら転がるように小さく跳び、地に剣を叩きつけた。
轟、という唸りと共に。
平原の大地はその剣を頂点にして、裂けた。
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