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「俺達は国民だ!!開けてくれ!!」
王都へと続く大きな門。
固く閉められたそこは、僅かにも動く気配を見せなかった。
門の上には数十人の弓兵が矢をこちらへと向け、その真ん中であの恰幅のいい側近が、嫌味たらしい指輪を着けた手を向けている。
「イヴァンを殺し!メルグリースを国内まで進軍させ国を脅かした売国奴め!!
貴様などが王都に足を踏み入れられる筈があるまい!!」
背負ったアリシアの様子を見る。
……息が荒い、このままでは。
「……ッ!!違う!!俺じゃない!!ワスイには化け物のような女が、」
「化け物は!!貴様だろう!!!
去れ!!弓兵!!悪鬼羅刹を射ち倒すのだ!!!」
「ちがう……違う!!頼む……!!」
無数の矢の雨が降りそそぐ。
アリシアを下ろし、庇うように抱き締めた。
背中に刺痛を幾つも感じながら、叫ぶ。
「俺は……いい!!妹だけでも!!妹だけでも入れてやってくれ!!流行り病なんだ!薬が……薬がいるんだ!!」
雨は、止まない。
「……ぁあっ!!」
耳元で、アリシアの叫び声を聞いた。
庇いきれなかったアリシアの足には……矢が、突き刺さっていた。
どくん、と。
心臓が鳴る音がした。
ーーーこれが、お前の守っていたものか?
「……違う」
頭に響く声に、応える。
もう、何も考えられなかった。
ーーーこれが、お前が守りたかったものか?
「……違う!!」
ーーーそうだろう、そうだろう。
ならば、何も考える必要はないだろう?
……さあ、呼べ。
口を開きかけ、止まる。
……誰かが、何か。
言っていたような気がする。
(……あ……からは……つ……な!!)
よく、聴こえない。
もう……いい。
どうせ、俺は……化け物だ。
「来い…………"アレス"」
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