「城壁の破壊者」

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トーアライム城の大広間に、数十名の足音が響く。 王はその奥で頬杖をつきながら、玉座に座っていた。 「……穢らわしい」 吐き捨てるように、王は呟く。 「メルグリースを国内まで進軍させ西部、南部を壊滅……王都の大門も破壊したそうだな。 どんな妖術を使ったのか知らんが……いやまあ、それは今はどうでもいい。 貴様も、失態などという言葉で済まされるとは思っていまい?」 淡々と、王は話す。 ……東部の事は、まったく意に介していないようだった。 「…………」 口は開かない。 何もかも、そうだ。自分の責任。 「磔刑だ。その前に爪を剥ぎ四肢を落として……ああ、貴様に家族はいるか?」 「…………!?」 「ここに来るまでに、妹子を王都の病院に連れています」 王の手前少し気を取り直したのか、槍兵の一人が発言する。 「連れてこい」 「はっ!」 「……ま、待ってくれ!!妹は関係無いだろう!!」 発した言葉は誰の耳にも届かない。 数人の兵が敬礼をし、出ていった。 伸ばした手は空を掴み、遠のいていく足音が耳鳴りのように響く。 「マルスよ……楽しみだな……ははっ」 卑しく笑う王を睨み付ける。こいつは……何を、何を言っている? わからない、否……この後の事などわかりきっている。 ……程なく、兵に押されながら、ふらふらとアリシアが隣に跪いた。 「ほお……これは……」 王はアリシアの顔を掴み、下卑た顔を浮かべた。 「貧困層の土臭い住民と思っていたが……なかなかに見目麗しいじゃないか。 喜べ、お前の兄は死ぬが……お前は慰安婦にでもしてやろう。ははっ」 「な……にを、……?」 這いずるように王に掴みかかる。 ……何を、言っている? 「国王陛下……!俺は、どうなってもいい……お願いします、妹は、妹だけは……ッ!?」 衝撃と共に視界が回る。 顎を蹴り上げられ、不様に転がった。 「下賤の……クズがッ!! 私に触れるな!!」 追い打ちをかけるように、二度……三度、踏みつけられる。 痛みなど、感じなかった。 ただ……ただ冷静に。 視界はずっと、苦しそうに息をするアリシアを捉えていた。
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