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「それがどんな結末を産もうと、あんたはその責任は取らなきゃならない。
他人に責任転嫁なんて出来やしない……"知らなかった"から、なんて言い訳はな。お門違いなんだよ」
青年は俯き、手を胸の位置まで上げた。
握られた紋様は蒼から緑色に変わっていく。
そして次の瞬間には……青年の紋様の切っ先が、喉元に当たっていた。
「なッ……に……!?」
早さ、などという言葉では計れない。
風を切る音も追い風もなく、まるで青年と自分の間の空間を切り取ったような……瞬目すら許されない刹那の間だった。
「ーーーひとつ、訊かせろ」
それまで、静かに口を閉ざしていたアレスの言葉を吐き出す。
「ーーーお前の神は誰だ?
そのような力を持つ神など聞いたことがない」
「……漸く、出てきたな」
青年は笑う。
「アレス。
あんたは、在るべき場所に戻らなきゃならない。
……"あれ"が、起こされる前に……ッ!?」
青年が気を散らした一瞬の隙をつき、紋様を弾く。
青年はまた、空間を跳び距離を離した。
……触れた。
ならば、奪うことができるかもしれない。
「あっ……ぶねー……、そうだよな。
軍神のあんたが……黙ってやられるわけないよな」
飄々と乱れた帽子のつばを抑え、青年は表情を変えた。
……青年の紋様が黄金色に輝く。
「いいよ、あんたらには知る権利がある。
なんでもお望み通り教えてやるよ。
俺に勝てたら……だけどな」
その言葉に、口角が上がる。
……一瞬の沈黙。
そして、ほぼ同時に二人の足元の花は舞った。
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