「城壁の破壊者」

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―――ほう……、稀に見る淀みだ 朦朧とする意識の中で、はっきりとした声が聴こえた。 ―――おい、自戒した狂気がこぼれているぞ 口を開こうにも、体は言うことを聞かない。 ―――いい、いい。楽にしろ 必要なのだろう、我が力が。 理解が追いつかない。 なんだ、これは。 ―――生きたいだろう? ならば、祈れ。 我が名に心身を捧げよ。 意味が、わからない。 この一方的な話のどこを探しても、答えなどなかった。 ―――我が名は…… だから。 差し伸べられた手を、無我夢中で掴んだ。 ただ、それだけのことだった。
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