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「うん、イイねその表情!」
「目線頂戴!」
「じゃあ今度は遠くを儚い感じで...」
言葉巧みに、モデルの一番いい表情を引き出すのが上手いなと思ったのが、初めて仕事した時の僕の第一印象だった。
その後、何度となく現場が一緒になる機会があり、スタッフみんなで飲みに行く程度の間柄にはなっていた。
「OK!お疲れ様でした!!」
カメラマンの一声に、現場の空気が一気に和やかになった。
「宇野さん、可愛く撮ってくれてありがとうございました!またよろしくお願いします!!」
撮影した画像を確認し、アリサちゃんは満足気に現場を後にした。
「宇野さん、お疲れ様でした。」
「ああ、金沢さんお疲れ様でした。あれ?髪色変えました?」
「えっ?あ、はい。」
「金沢さんの色の白さを引き立たせる綺麗な色ですね。」
そう言って、フワリと微笑む宇野さんに不覚にもドキッとした。
「またまた~、そんな台詞は僕じゃなくてモデルさんに言ってあげて下さいね?」
「いえいえ、世辞じゃなくて、本当に。それよりこの後ケツ空いてますか?」
「あ、はい...」
「じゃあ少し付き合ってもらってもいいですか?」
「ええ、荷物置いてからになるので、その後でよければ。」
何度か一緒に仕事しているものの、こんな風に誘われるのは初めてだった。
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