第0章 消失の予兆

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  数歩詰めれば手が届く間合いに、一人の少年が立ちはだかっていた。 少し長めの黒髪を無造作に下ろした、何の変哲も無い高校生に見える。 しかし、彼の後ろには同じ学校と思しき制服姿の少女が二人、固唾を飲んで彼の背中を見守っている。 たまたま通りがかったのが運の尽き。少年、七城伊佐治【ななしろ いさじ】にとっては退路の無い戦いになってしまった。 だがしかし、勝算はあった。 「拝装【ハイソウ】……」 伊佐治が胸の前で両手の平を合わせ、瞳を閉じる。 みるみる両手に真っ白な光が集積し、次の瞬間顕現したのは、一振りの剣【ツルギ】。 無反りの刀身が艶やかな虹色の光を乱反射する。 『拝装』とは、神様より神器を借り受ける事、および借り受けた神器の総称である。 彼が今、神様から借り受けたのは機人を破壊するための神刀、その名も、 「高天の剣【タカアマノツルギ】!!」  
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